シャールと自転車10

たちき「学校を挟んで、家とゲーセンは反対方向にあったんですけど、帰り道によく行ってました」
シャール「一人でですか」
たちき「一人で行くこともあったし、友人達と数人で行くこともありました」
シャール「ゲーセンではなんのゲームをやっていたんですか?」
たちき「それを書くと話がそれてさらに年齢バレにつながるので今は秘密です」
シャール「寄ったのはゲーセンだけですか?」
たちき「以前書いたかもですが、街中のボウリング場にいったりもしました。自転車で」
シャール「一ヶ月ちょっと前の記事ですね。じゃあカラオケとかは?」
たちき「そういえばカラオケは……高校時代は近所になかったからあんまり行った覚えがないんです。でも数回は行ったかな、自転車で」
シャール「そうなると、昨年末に聞いたTRPGのイベントとかはもちろん……」
たちき「自転車ですね。高校の頃はどこに行くにも自転車ですよ」
シャール「大活躍だったんですね」
たちき「他にも、本屋さんや書店、古本屋を巡ったり」
シャール「それ全部本屋さんですよね」
たちき「高校の頃はファッションとか興味なかったから、お洋服屋さんとか行かなかったですし。いや今でも全然行かないけど」
シャール「本屋さんは好きだったんですか?」
たちき「好きでした。……あー、本屋といえば」
シャール「なんですか。気になりますけど、自転車トークから話がそれるならまたの機会でいいですよ」
たちき「いえ、自転車トークです。でもこれは話すかどうか悩む出来事ですね」
シャール「そこまで聞いたら気になります」
たちき「ちょっと暗い話になりますが……。16歳のあの頃、さっき書いた通り学校帰りに家とは全然違う方向の本屋へ寄って、帰ろうとした時のことです。店の外に出たら小雨で、足早に駐輪場に行ったらどこからか猫の鳴き声がしていて」
シャール「雨の中に猫の鳴き声ですか。近くに野良猫が濡れていたとか」
たちき「そう思って周りを見ても猫の姿はなくて、でも近くから猫の鳴き声がしているからおかしいなと思って自分の自転車のカゴを見たら、小さな猫が二匹、箱に入ってたんです」
シャール「……捨て猫ですか」
たちき「多分。あまりの出来事に自分もどうしていいかわからなくて、うちはペットとか飼えないし飼ったこともないから連れ帰るという選択肢はないにしてもとりあえずどうしようカゴから出さないと帰れないけどこの子達はどうしようどうしよう……みたいに頭の中でぐるぐると考えてしまいまして」
シャール「どうしたんですか」
たちき「悩んで悩んで、でもやっぱりどうしようもなくて、ていうかたくさん自転車あるのになんで僕の自転車にとかこれは何かの運命かもって思ったけど、結局何もできなくて。カゴから箱をそっと出して雨の当たらない軒先において、誰か見つけてくれればって祈りながら店をあとにして、帰ってから泣きました」
シャール「…………そうですか」
たちき「今でもね、あの場面は脳内再生されるんです。小猫達の姿は覚えてないけど多分二匹とも黒っぽい色で、縋るような鳴き声で。ほんとにあの選択肢しかなかったのか、もう少し構ってあげればよかったのか、もっといい方法はあったんじゃないかって」
シャール「いえ、無責任なことをするよりむやみやたらと情けをかけるより、たちきの行動は正解だと思いますよ」
たちき「そうなんでしょうか」
シャール「その場に私がいれば、なんとかできたのかもしれなかったんですけどね」
たちき「いつかまた機会があったらお願いします」