シャールと始まらない物語・エピソード2

※この物語はフィクションです。また、続きはありませんのであらかじめご了承ください。


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(あの子、今頃なにをしてるんだろうな)
そんなことを思いながら、インターネットでふと、昔馴染みの名前を検索してみた。
昔馴染みっていうか、まあ小学校六年間ずっと同じクラスだった女の子で、お互い少しずつ意識していて、でも結局一歩踏み込んだりはしなかった、そんな相手なんだけど。
検索してみたらびっくり。あっさりと見つかった。名前はともかく苗字はなかなか珍しいから、間違いない。同姓同名とかじゃなくて絶対本人。
ひとつはフェイスブック。僕はやってないから詳しくは見れないけど、でも写真見る限り変わらない感じかも。
もうひとつはその子の職場のサイト。プロフィールを見ると、学歴が僕の知ってるその子の情報と一致するから、やっぱり本人。ていうかこの職場……すごくない? 有名なあのお仕事ですよ。うまく書けないけど。
なんか本も書いてるみたいだし、講師みたいなこともやってるみたいだし。すごいな〜って感想しか出てこない。
それに比べて僕は……なんてことは今は言わないけど。
さて、職場のプロフィールと一緒に、メールアドレスが載ってるんだよね、その子の。もちろん仕事用のアドレス。でもこれって、メール送ったりしてみたらどうなるんだろ。
「こんにちは。小学校六年間同じクラスだった羽森樹です。あなたの名前を検索したらこのアドレスが見つかったので、嬉しくなって思わずメールしてしまいました」みたいなのを送ったりしたら……いやいや、逆の立場だったら怪しいよね。返信しないよね。せめてもう少し明るめに
「ちょぅひさしぶり☆ たちきだょ。げんきしてるぅ?」みたいな……ってギャルか! これはさすがにないにしても、やっぱり仕事のメールアドレスにプライベートなメール送るのはダメだよね。
うん、メール送るの、やめとこう。
そして、初めて検索してから約10年経った今も、メールを送っていない。