シャールと国勢調査

シャール「たちきの国では、五年に一度、国勢調査というのがあるらしいけど」
たちき「そうらしいですね。シャールの世界にはそういうのはないの?」
シャール「私、記憶喪失設定だからわかんないのよね。どういうものなの?」
たちき「……さあ?」
シャール「さあって。名前からして、何か調査されるんじゃないの?」
たちき「いや、したことないんでわかんないんですよね。書類が送られてきて何か書き込んで返送するのかしら?」
シャール「インターネットでもできるって言ってなかった?」
たちき「よくわかんないんですよ」
シャール「五年前はどうしたのよ」
たちき「五年前っていうと、ぎりぎり今の部屋に引っ越す前ですね」
シャール「引っ越す前でも、前の部屋の時にそういう調査は来なかったの?」
たちき「そういえば来なかったですね。もっとも、基本的に日中は部屋にいないから、不在票でもない限り昼間の来訪者には気付かないわけですが」
シャール「調査の人が不在票置いていったりは?」
たちき「わかんないです」
シャール「ちなみに十年前は?」
たちき「一人暮らししてたはずですけど、特にそういう調査は回ってこなかったかと」
シャール「……たちき、実は人間界の住人じゃないんじゃない?」
たちき「まさかの結論!? そうなんですよ。実は僕、シャールと同じ妖精界の住人で」
シャール「勝手にこっちの世界の住人にならないでよ。いくら戸籍がないからって」
たちき「さすがにありますよ、失礼ですね。ぷんぷんですよ」
シャール「鬼籍じゃなくて?」
たちき「もっと失礼になった!?」
シャール「おっと、奇跡的な言い間違えをしてしまったわ。鬼籍だけに」
たちき「うまくないです。間違えるなら、せめて妖籍と言ってください」
シャール「なにそれ?」
たちき「だから、妖精界の戸籍。略して妖籍」
シャール「そんな言葉はないです」
たちき「おあとがよろしいようで」
シャール「いやよくないでしょ。調査には協力しなさいよ」
たちき「紙が届いたら考えます」