シャールとパスタ

シャール「たちきって、パスタ好きですよね」
たちき「大好きですね」
シャール「何か理由があるんですか?」
たちき「あるようなないような……」
シャール「じゃあそれはあとで聞くとして。何が一番好きですか?」
たちき「ミートソース!」
シャール「ソースを手作りするんですか?」
たちき「いやいや、レトルトや缶詰ですよ。どれもおいしいです。コンビニのも好きだし、スパゲティー屋さんでもまずはミートソースから食べますし」
シャール「何かミートソースが好きな理由とかきっかけがあるんですか?」
たちき「あるようなないような。いやあります」
シャール「聞いてよければ聞きますけど」
たちき「ミートソースに命を救われたんです」
シャール「命!? どういうことですか?」
たちき「小三だったと思うんですけど、すっごい高熱が出て食欲もなくて。何を食べても吐き気がしたり何も食べられなかったりの日が数日続いて。子供ながら、僕はもうダメだと覚悟した初めての大病でした」
シャール「病名は?」
たちき「いや、多分ただの風邪の延長くらいなんですけど。インフルとかでもなく。それでも、そんな高熱が出たのと食欲ないのは初めてで、親もいろいろ作ってくれたり買ってくれたりしたんですが」
シャール「高熱の時に食欲なくなるのは聞きますけど、そこまでですか」
たちき「そんなある日、夕食に出てきたミートソース(ソースは缶詰)はなぜか食が進み、気づけば一人前をぺろりと平らげたたちき少年」
シャール「なんでですか?」
たちき「なんでだったんでしょうね。今でもわからないんですけど、あのミートソースのおいしさはずっと覚えています。ミートソースのおかげで久しぶりのご飯が食べられたし、それを機にだんだん食欲も戻ったらしいです」
シャール「思い出の味なんですね」
たちき「それからですね、ミートソース大好きになったのは。それまではただのスパゲティーの一種類だったのが、その時からマイフェイバリット料理になりました」
シャール「いいお話でした」
たちき「ミートソースと親に感謝ですね」