シャールと二重魔法4

たちき「二重魔法『水氷華』について」
シャール「名前からすると『水』と『氷』の魔法で華(はな)を造る魔法か? でもそれだけじゃ二重魔法っていうには弱くないか?」
たちき「だいたい合ってますがちょっと違います。正確には、水を凍らせた氷で華を造る魔法です。でもまさにシャールの言う通りで、正直ちょっと地味な魔法なんです。ただし繊細な技術が必要なために難易度はかなり高く、思い通りの華を造るのは難しいです」
シャール「難しいというと?」
たちき「氷魔法だけだと角ばったものは作りやすいんですが丸みを帯びたものを作りにくいんです。逆に水魔法で何かを形作ろうとすると丸みのあるものになります」
シャール「自然界の法則だな。魔法といっても自然界の法則には従っているわけだ」
たちき「そこでこの二重魔法『水氷華』ですが、氷魔法でただ華を造るのではなく水を凍らせて華を造る魔法だからこそできる丸みや球形や曲線がポイントになります。作中では紫陽花(あじさい)の華を魔法で再現していましたが、芸術魔法としてはかなりの難易度です」
シャール「華だけでなく茎や葉も造れるのか?」
たちき「術者の力量次第ではできる予定です」
シャール「それはすごいが、やっぱりちょっと地味だよな。もっと派手に攻撃魔法としてアレンジできないのか?」
たちき「今後の課題ですが……ちょうど今思い付いたのは、辺り一面に水魔法で『水』を撒いておいてから水を伝って任意の場所に『氷』を発生させるとかなら『水』と『氷』の二重魔法としていけるかもしれません」
シャール「なるほど。『水』から『氷』の氷柱を出したりするんだな」
たちき「弱点としては、術者が水に触れてないと氷が出せないということでしょうか」
シャール「今までの二重魔法と違って詠唱に時間がかかるんじゃなくて縛りがあるのか。そういう弱点があるのも重要だよな」
たちき「まあ思い付きなのでまたあとで変えるかもですが。さて次は『氷』と『雷』の二重魔法『氷雷盤』について」
シャール「今までの二重魔法と違って名前からどんな魔法なのか想像できないんだが」
たちき「順に説明しますが、これも一応自然界の法則に従っている魔法のはずです。……多分」
シャール「最後にボソッと何か付け加えたぞ」
たちき「まずぶっちゃけると、『火』と『氷』の二重魔法同様『氷』と『雷』の二重魔法も最初は思い付かなくて、作中では『禁呪』として伝わってない設定にしてしまおうと思いました」
シャール「せこいな」
たちき「しかし、16歳の頃に雷のできる仕組みを学んだとき、これだ! というアイディアが浮かびました」
シャール「雷の仕組みっていうと?」
たちき「簡単に言うと、雷って空気中で氷の粒がぶつかって電気を帯びて発生するのですよ。魔法で『雷』を起こすときはいきなり雷を作ってしまうわけですが、自然界の法則からすると『氷』の魔法だけでも『雷』を作れるのでは……という発想からこの二重魔法が生まれました」
シャール「なんとなくわかったが、結局どんな二重魔法なんだ? 氷魔法で雷を作るだけじゃ二重魔法って言えなくないか? それに魔法名の『盤』の意味がわからないぞ」
たちき「焦らず聞いてください。氷の粒がぶつかるといってもそれだけでは大きな雷が作れないため、まず自身の前に直径約20センチ円盤のを意識してその中に小さな氷の粒をたくさん作ります。必要なのは速度と密度なのでなるべくたくさん氷の粒を作りつつ円盤の中で回転させて円盤の中で氷の粒がたくさんぶつかるようにします。そうすると円盤の真ん中に電気が、というか雷の力が集まってくるので円盤を対象に向けて中心から向こうへ力を解放します」
シャール「なるほど。『氷』で円盤を作って『雷』を撃つから『氷雷盤』なんだな」
たちき「……いえ、正確には撃つのは雷ではありません」
シャール「どういうことだ?」
たちき「続きます」