シャールと雑談82

たちき「さてさて、今日もこんな時間の帰宅なわけですが。なんか道路が濡れてますね。もしかして夕立があった?」
シャール「あったもなにも、さっきまでの雷雨が聞こえなかったの?」
たちき「雷が鳴ってるのは聞こえましたけど雨音はわかんなかったです。室内にいたので」
シャール「すごい防音だね。今はもうやんだけど」
たちき「じゃあ今日は、夕立にまつわるエピソードを語ろうかな」
シャール「どういうこと?」
たちき「あれは……そう、僕が小学生だった頃のお話」
シャール「なんか急に語り始めたよ!」
たちき「あの頃の僕は、今よりちょっとやんちゃでちょっとアクティブで率先してクラスのみんなを引っ張っていくタイプで……」
シャール「嘘はやめようよ。ほんとのたちきは?」
たちき「……こほん。あの頃の僕は、引っ込み思案でおとなしくて真面目で本を読むのが好きで勉強できるくらいが取り柄の目立たないタイプでした」
シャール「今と変わらないね。それで?」
たちき「とある夏の日の放課後。クラスのメンバー十人くらいでわいわい遊んでる時に天気が急変。凄まじい雨が降ってきました」
シャール「夕立だ」
たちき「『やばい、雨だ!』『今日は解散!』『急いで帰るぞ!』と、みんな雨の中を帰り始めました。かなりの豪雨だったのを覚えてます」
シャール「たちきも帰ったの? あ、女の子の傘に入れてもらったとかそういうエピソード?」
たちき「残念、違います。空の様子と雨の様子を見て『この雨、少ししたらやむな』って思ったから校庭の木の下に避難して雨がやんでから帰ろうと思いました」
シャール「なんで木の下?」
たちき「校舎までいくのも結構濡れそうだったから、遊具の近くの木の下に」
シャール「一人で待ってたのかな?」
たちき「いえ、みんなが帰っていくなか『たちき君は帰らないの?』って言ってくれた友達がいて、僕が『この雨はすぐにやむと思うからやんでから帰るよ』って言ったら『ふーん。じゃ俺も待つかな』って一緒に残ってくれて、二人で待ってました」
シャール「たちきを信頼してくれたのか一人で待つのをかわいそうと思ってくれたのか……。どっちかな」
たちき「どうでしょうね。そんなわけで他の友達がみんな帰っちゃった中、二人で三十分くらいお喋りしながら待っていたら、無事に雨はやみました」
シャール「二人が無事でよかったよ」
たちき「雨上がりの綺麗な夕焼けと『すげー、ほんとにすぐやんだ』という友達のセリフは覚えてます」
シャール「長引く夕立もあるよね。すぐにやんでよかったね」
たちき「さっきも書いたけど、クラスの男子では多分一番読書するほうだったんです。理科の授業とか好きだったし、図書室にあったまんがで学ぶ理科とか算数とかの本もよく読んでたし、とりあえずあの頃の僕は『夕立はすぐにやむ』っていう認識だったんだと思います」
シャール「雨がやんだあとは?」
たちき「すぐに帰るのももったいないと、誰もいない広い校庭を駆け回ったり遊具で遊んだりしましたが、地面や遊具は濡れてるわけで」
シャール「それはそうだよね」
たちき「疲れたからすぐに帰りましたけど、あれは今でも鮮明に覚えてるくらい思い出深い出来事です」
シャール「ちなみにその友達は?」
たちき「クラスでも人気のある男子で、小学校中学年の時は一番か二番に中のいい友達でした。卒業してからは全然連絡とってないから今はわかんないです」
シャール「昔はLINEとかなかったしね」
たちき「元気にしてるといいなと願っています」