シャールと自転車39

たちき「さて、昨日のサイクリングについて二点追記しておきたいことがあります。いいですか?」
シャール「なんですか、あらたまって」
たちき「一つは、危うく車にひかれそうになったこと」
シャール「そうなんですか? 大丈夫でしたか」
たちき「まあ車にぶつかられたわけではないです」
シャール「原因は? まさかたちきが悪いんじゃないですよね」
たちき「状況を説明する前に補足ですが、自転車に乗り始めてから約五ヶ月。基本的に人も自転車も車も少ない道は時間を選んで乗ってきました。朝と夕方は乗らずに日中サイクリングで、通るのはサイクリングロードかたんぼの中を走る田舎の国道の歩道で自転車専用道もある道ばかり」
シャール「どちらも自転車がメインの道ですね」
たちき「ところが昨日は、交通量がそこそこ多い夕方の県道を走っていたんです。基本的に自転車は左側通行だから道の左側を走るのですが、目的地が道の右側にあったから一つ前の信号で右側へ渡ってしばらく走っていたら……」
シャール「右の道から車が出てきた、とかですか?」
たちき「そうです。僕からはその車が見えてましたし、こちらも立ち漕ぎをして自転車いますよアピールをしたのですが、その車の運転手は右の道から県道へ左折するにあたって、右しか見てないようで、左から来る自転車、つまり僕のほうは見てないみたいでした。しかも一時停止をほぼしないで左折しようとした瞬間、僕が車の前を横切った感じです」
シャール「ほんと危ないじゃないですか」
たちき「止まってもよかったんですけど、交差への進入と優先度はこちら側ですから。とはいえ、もしぶつかっていたらこちらは県道まで転がっていたでしょうから、相手が悪いといってもケガするのはこちら。次回同じような状況になったら止まるつもりです」
シャール「そうしてください。聞いてる限り、かなり危なかったんですね。何事もなくてよかったです」
たちき「次回はサイクリングロードとか車の来ない、または車の少ない道を走る予定ですが、自転車は常に車と隣り合わせで走っているという危機感を改めて感じた出来事でした」
シャール「ちなみに、逆の立場の場合、たちきはちゃんと右も左も見てますか?」
たちき「もちろんです。慎重すぎと言われるくらい、左見て右見て左見て右見てます」
シャール「見すぎじゃないですか?」
たちき「車の運転は慎重すぎるくらいでいいんです」
シャール「まあそうですね。それで、もう一つはなんですか」
たちき「遠目だったし一瞬だったのですが、初めて自分と同じ自転車乗ってる人を見かけました」
シャール「すぐにわかるんですか、自転車」
たちき「僕の自転車はかごが特徴的なので。もしかしたら同じ自転車じゃないかもですけど、少なくともカゴは同じでした」
シャール「確かに珍しいタイプの形ですよね、あのカゴ」
たちき「いや〜、仲間意識というか、ちょっと嬉しかったですね」