シャールとボウリング4

たちき「他のサークルにはない取り組みをしようということで、ポスターに一つ仕掛けを取り入れました」
シャール「なんだろ。当時まだ斬新だった、QRコードからサークルHPへの誘引をしたとか」
たちき「……あの頃QRコードってあったのかな、詳しくないからよくわかりません」
シャール「じゃあ違うんだ。で、仕掛けっていうと?」
たちき「いや、ありきたりなやつですよ。ポスターの下にサークルメンバーの連絡先のメアド書いた小さな紙をビラビラ貼っておいて、気になった人はちぎって持っていけるようにしただけです」
シャール「意外と普通の取り組みだよね」
たちき「意外と見かけなかったんですよ」
シャール「効果はあったの?」
たちき「日ごとに紙は減っていきました」
シャール「よかったじゃない」
たちき「でも連絡はあまり来ませんでした」
シャール「まあ、そうよね。今ならメールやツイッターやLINEで問い合わせしやすい世の中だけど、昔はなかなかハードル高いよね」
たちき「電話はともかくメールくらいなら気軽に送れると思ったんですけど、予想より反響はなくて残念でした」
シャール「ということはサークルに新入生は……」
たちき「察してください。まあ、ボウリングとは別で仲良くなった後輩が入ってくれたんですが、それはまた別のお話で」
シャール「新メンバーは女の子がよかったとか、期待しすぎたんじゃない?」
たちき「そこまで露骨なことは考えてませんでしたよ」
シャール「ほんとに?」
たちき「純粋にボウリングが好きで、スコアアップを目指してやりたい人を集めようと――」
シャール「そういえば聞き忘れてたけどサークル名とかは?」
たちき「最後まで言わせてよ!」
シャール「無難に◆◆大学ボウリングサークルとか、ボウリング同好会とかにしたの?」
たちき「具体的に書いちゃうと身バレにつながるからぼかしますけど、BCGっていうサークル名でした」
シャール「お注射ですか?」
たちき「だから本当のサークル名じゃなくて仮の名前だってば」
シャール「何かの略ですか?」
たちき「略とかじゃないです。三人でいくつか意見出してふんわりと決まりました。で、あとから無理矢理こじつけました。だからしいて言えばボウリングサークルグループ、の略です」
シャール「サークルでグループって。意味不明ですね」
たちき「付け加えると、同じメンバーでカラオケいくときは頭文字をとって『このあとK行こうぜ』とか、麻雀するときは『週末はJね』みたいな使い方してました。ちなみにボウリングは『明日のGは3ゲームで』って感じです」
シャール「カラオケ以外、略し方がおかしいんじゃ」
たちき「仲間うちでしか使わない暗号みたいなものです。余談ですけど、テニスはT、マレットゴルフはMなど、いくつか派生もあります」
シャール「なかなか楽しそうじゃない」
たちき「そうだね。あの頃が一番楽しかったのかも……(遠い目)」